2006-2009年の間に何が起きたのか、そして、ヒップホップ、あるいはダンスミュージック、ひいては音楽に何がおこったのか、それを2009年の終わりの今、俯瞰してみるにはいいタイミングでしょう。
振り返るに、何よりも大きかったのは、J Dilla, Jay DeeことJames Dewitt Yanceyの死でした。
Wikipediaにもある通り、また、Janet JacksonのGot Till It's Goneでも紹介したように、90年代後半のR&Bからゼロ年代のヒップホップまでを、その類い稀な感性と「空間の美」に対する執着心をもってシーンを引っぱりつづけた不世出のプロデューサーでありトラックメイカーだったJ Dilla。多作で知られる彼は、アメリカの音楽界でも"Your Favorite Producer's Favorite Producer"(あなたの一番好きなプロデューサーの、一番好きなプロデューサー)と称されるほど広範囲かつディープな名声を勝ち得、そのサウンドプロダクションは、N.E.R.D, ティンバランド、アウトキャスト、カニエウエストなど、どの売れっ子にも強く深い影響を与えたって、言っちゃっていいでしょう。
2006年初頭に彼が亡くなり、また鬼籍に入るとほぼ同時にリリースされたアルバム"Donuts"の完成を期に、インストヒップホップの迷走、そして冒険がはじまります。すべてが彼の"不在"を軸にして回りだすという点ではD'Angeloのケースととてもよく似ていますが、音楽の消費のされ方が大きく転換したその後の趨勢と合わせて考えると、J Dillaの早逝の方がよりエポックメイキングな出来事だと言えるのかもしれません。


